小中学生の指導において、進学塾Uineは「補習」の名目で授業外の指導をすることが多い。これについては自分自身、運用に悩みもあるところなのだが、それも含めて現状について整理してみたいと思う(このエントリーは新入塾のご家庭に対する補習の説明を兼ねています)。
「補習」というがここでは「正規の授業日以外に塾に来て勉強するもの」を指す。要するに、再テスト、授業時間以外に実施するテストも補習の一環と考えている。
具体的にどんなタイプの補習があるかというと、
○入塾時にかなり勉強が遅れており、前学年以前のものを取り戻す必要があるとき。
○授業時間だけでは必要な作業が終わらないとき・宿題にしてもできなさそうなとき。
○授業時に実施する単元確認テスト等が不合格で再テストを受けるとき。
○授業時に実施できない、それなりの分量のテストを受けるとき(ほぼ中3限定)。
という4通りとなる。
なんだか進学塾Uineというと「やたら補習が多い」と言われているらしい(生徒に聞いた話)が、もちろんのべつまくなしに補習をしているわけではない。だいたいイメージ的には平均(中学生なら定期テスト平均点、小学生ならカラーテストが70点未満くらい)に届かないような場合、決められた内容が終わらないことが多いので補習という形で呼び出して作業をさせたりし、またそういう生徒はなかなかテストに合格できず再テストが続く、ということが多い。やはり授業で鍛え、授業範囲内の課題(宿題やテスト、塾内作業)で伸ばしていくことが理想であり、そのための指導設計を行ってはいるが、全員がその範囲内でスムーズにできることはなかなかないわけで、そこで補習の出番となるということだ。
自分で塾を構えたとき、文字通り「全員の成績を上げるため、できるまで指導する」を目標に据えた。塾としては当たり前の姿勢だと思うし、そうお考えのご家が庭も多いだろう。ただ、この「できるまで指導」、まさに言うは易し行うは難しで、実行するには困難が伴う。
1つに時間がかかるし、そのための人員が必要だ。人件費は第三次産業においてもっとも大きい割合を占めるものであり、塾もその例に漏れない。可能な限り人件費を削るのが、ある意味「正しい」企業姿勢であるなら、補習はやらない方がよいことになる。まあこの点、進学塾Uineは個人塾なので補習をやっても私の勤務時間が増えるだけだから、やりたければやればいいし、そういう指導をしたくなければ安請け合いをしなければよい。私は前者を選んだわけだが。
また、最も切実な問題として、できるまでやらせたらきつくて辞めてしまう生徒が出る。こちらが熱を入れて指導すれば生徒もそれに応えるということは、当然だが常にあるわけではない。生徒の成績を伸ばそうというさまざまなはたらきかけは、当事者である生徒にとっては大体きついものだ。これまでの勉強で大きな抜けがあったりすれば、そこに立ち返って勉強しなければならないわけで、勉強時間は自ずと増加する。また勉強の苦手というのはある科目のあるやり方が分からないとかではなく、いわば全人格的に関わるもの(考えることが好きではない、言葉でのやり取りが不得手、易きに流れる・物事の取り組みに淡泊な性格、などなど)だから、その点を掘り下げて指導しなければならない。自ずと生徒の現状を「リセット」するような指導も含まれてくるわけで、分からない箇所を教えて、ハイできるようになりましたなんてことはまずないのだ。そうした指導の中での指導者の「熱」は、生徒の退塾という、もっとも不本意な結果を導きうる。
そもそも、補習をやれば簡単に成績が上がるというものでもない。学習効果というのは三歩進んで二歩下がるどころではなく、時に「二歩進んで三歩下がる」的な性質が多分にあり、勉強に困難があればあるほど、その成果は数ヶ月程度では測れないものだ。ただ、補習を受ける側(生徒、ご家庭)は頻繁に補習があれば成績向上を期待するのが人情であり、それがなかなか上がらないとなれば「こんなに補習をやっているのに」と責任を問う声も時に上がってくる。個別指導塾で、補習ではなく受講コマ数増で対応している場合はなおさらだろう。
事程左様に、補習というのは塾側にとっても難しさを伴う。ではなぜ進学塾Uineは補習を頻繁に行うのか。それは、「できない理由」を生徒だけに帰すことを避けたいからだ。生徒達ができない理由はさまざまだが、我々指導側の「逃げ口上」として、できない要因を、生徒の能力や生活習慣、意欲に求めるというのがある。「暗記力が低い」「勉強をやる習慣ができていない」「やる気に乏しい」などなど。授業をやって、「適切な」テストをし、「適切な」補習をやって、それでもできないものは、生徒の責任に求める。勉強の主体は生徒なのでそれは間違ってはいないかもしれないが、料金が発生しないことはしない、塾の定めた指導以外はしないという姿勢で、できない理由を生徒に帰すのはどこかおかしい。そうずっと思ってきた。
やる気がまったくないものを出すように仕向けることは難しいが、不安でも、戸惑いながらも、一歩踏み出す気持ちがあるのなら、可能な限り塾側で引き受け、指導をもって向上の道筋をつけていきたいというのが進学塾Uineの基本的な考えだ。暗記力が低いならそれを上げるやり方を教え、繰り返させていく。勉強習慣がないなら、「家でやりなさい」ではなく(そもそも家でやれるなら勉強に苦労しない)、まずは塾に来て勉強をするところから始める。テストが合格しないならできるまでやらせ、達成感を獲得させる。そういう風に塾で引き受けて成績向上を目指したいという思いがある。
こうした指導は、上に書いたような難しさが必ず伴う。私として一番忸怩たる思いになるのは、やはり退塾だ。昔は「必要な補習をして、それがつらくて辞めるなら致し方ない」なんて偉そうに思っていたが、やはり勉強は継続してこそ意義があるもの、頑張ろうとしている生徒が辞めてしまうような指導はこちらにもなにがしかの落ち度がある。そこに関しては常に頭を悩ませながら、きちんと向上が図れる負荷を与えつつ、心くじけないような課題設定や働きかけを意識してはいるのだが、もちろんこちらの思いと生徒の気持ちが常にマッチするわけではなく、補習が要因の退塾はままある。せっかくのご縁で大事なお子さんをお預けいただいたにもかかわらずそれが途切れてしまうのは、非常につらいことでもある。
また、別の悩みもある。補習は授業時間外の指導・学習なので、どうしても生徒達にとっては余計な感じややらされている感、また補習が多ければ劣等感にもつながりやすい。また、私も補習に関して料金をいいただくことはないので、臨機応変、小回りのきいた指導といったら聞こえはいいが、見方によっては行き当たりばったりでもあり、必ずしもシステマティックに行うものにはなり得ていない。それなら、生徒に応じて指導日数を入塾時に設定し、適宜見直しを図って料金にも反映させれば、余分な指導といった印象はなくなり、またきちんとしたシステムに沿ったものになるだろう。ただそれは個別指導スタイルであり、集団指導塾である進学塾Uineの方法との折り合いという点で難しさが生まれてしまう。開校以来ずっと悩んでいることであるが、そろそろ新しい指導のフェーズを作る必要もあるかもしれない。
当たり前のことだが、生徒達の時間も労力も限りがある。「できるまでやる」と格好いいことを言っても、時間的な制約や現状での「がんばり限界」は必ず存在し、それを超えた指導はできないどこかで妥協せざるを得ない場面はある。それでも、「できるまで頑張ろう」という言葉のもと、生徒達と共に努力を続けていくのが、進学塾Uineの、ちょっと青くさい理想となっている。補習を多く重ね叱咤激励してきた生徒が自ら進んで自習に来るようになり、自分の力で、力強く勉強できるようになる。そういう姿を見るにつけ、いくら理想的であったも、必要な働きかけはしっかり行っていこうとの気持ちを新たにする。綴ってきたように悩み多いものではあるが、今日も補習にやってくる生徒の遅れや弱点を補っていく。