補習の必要性

先日入塾面談で「補習」についての質問を受けたので、ここで改めて進学塾Uineの「補習」についての考えを記しておきたいと思います(このエントリーは入塾をご検討いただいている保護者の方へのご案内の性格が強いです)。

進学塾Uineではよく「補習」という名目で時間割にはない指導を行います。授業がない曜日、時間に呼んで、必要な作業をしてもらうものです。ちなみにこの原稿を書いているのは日曜日の午後3時ですが、教室には小学生2名、中1生3名、中2生1名が補習にやってきています。

生徒全員の学力向上を目指すならば、間違いなく時間割だけの指導だけではこと足りません。もちろん規定の時間内で生徒を伸ばすことが理想ですが、成長途上にある子供たちの学習には不確定要素もつきものであり、こちらの設計通りに勉強が進むことはむしろ稀です。

-集団指導で新単元を導入します。ホワイトボードや黒板を用いて解説(学校と同じようなスタイル)し、その後問題演習に移りますが、すぐに差が生まれます。解説がスッと身のうちに入る生徒もいれば、何度も反芻しないと理解できない生徒もいるからです。当然問題演習の速度・精度も大きく異なり、授業時間内に進んだ分量はかなり違ってきます。個別指導でも同様で、個別指導は先取りよりも学校で勉強したところを補強的に指導することが多いですが、生徒の理解度、作業速度によって当然進度はまちまちになります。

集団指導にせよ個別指導にせよ、教える側が計画(予定)している進度というものがあります。中々進まない(苦手な)生徒に合わせるだけになってしまうと、進度は遅れるばかりです。なにがしかの方策を用いて、予定の進度に生徒を導いていかなければなりません。

ではどうするかというと、一番手っ取り早いのは「講師が教えてしまう」ことです。生徒が理解が不十分でも、解き終わっていなくても、解説してしまう。集団指導なら宿題で進度を調整(苦手な/遅い生徒にとっても多めの宿題が出ることもある)し、次の授業で解説するのはよくあるやり方です。生徒一人ひとりの宿題への取り組みや理解はともかくとして、設計通りの進度を確保するために解説で進度を整えます。個別指導でも同様で、横について教えてしまえばそこまでは「終わった」ことになります。

こうして進んだ単元について、苦手な生徒に「分からないところは質問して」という呼びかけがなされることも多いですが、これも対応設計によっては、我々による単なるエクスキューズになります。例えば、授業後にしか質問対応をする時間がない場合、居残って質問をするというのは生徒達にとって相当なハードルです。もっと質問しやすい体制を整えるべきですが、これでは質問すべき生徒(苦手/遅い)からは質問はまず出てきません。

私は集団指導の講師であり、予備校でも教えていた経験がありますから、授業の力を強く信じています。-生徒達にはまず良質の授業を提示する。授業の力をもって、生徒達を教え導く。塾の指導においては、発問と回答というインタラクティブなやり取りを駆使し、生徒達の中に新鮮な気づきと、分かる実感を生み出していく。-こうした授業に対する強い信頼感は、私の中では決して揺らぎません。「解説で理解に導く」も当然あるべき手法であり、それを全面的に否定するものではありません。

しかし一方で、小中学生の指導においては、「発達途上」を念頭に置いておかなければなりません。上記の授業の力を十全に発揮するためには、生徒達もまた、十全のコンディションで授業に臨む必要がありますが、忙しい日常生活を送る思春期の子供たちが、やる気をしっかり身にまとい、心身ともにクリアな状態で授業を受けることなど、むしろレアケースです。部活の疲れ、友人とのトラブル、親子の軋轢、さまざまな内的葛藤などなど、生徒達はなにがしかを抱えて授業に臨みます。ですから、授業だけでは伸ばしきれない、また生徒達にとっては理解を進め、力を蓄えきれない部分が、どうしても出てきてしまうのです。

進学塾Uineでは、補習とは授業だけではケアしきれない部分に目を配り、そこを埋めたり引き上げたりするものとして位置づけています。補習での頑張りが自分を大きく変えていくきっかけとなり、成績の劇的向上を果たした先輩は何人もおります。弱点と向き合うきっかけとしても、補習のあり方は非常に重要なものです。

例えば、現在の中1生の補習は数学で方程式の文章題に取り組んでいます。教えてもらうのではなく自分で立式することの重要性を説明し、苦手な生徒には少しずつハードルをあげながら、「できた!」という感覚をもってもらいます。2時間かかって2~3問しか進まない生徒もいますが、できるという実感が伴えば、それは「実力」となり自分でできるようになるまであと少しです。今日補習にやってきていた生徒も、時間をかけてそうした実感を「少しだけ」強化して帰宅しました。勉強は一朝一夕にはなりませんから、また来週末も補習を行います。生徒達の頑張りにも、頭が下がる思いです。

それにしても、この「補習」という言葉には、どことなく「できない生徒」というレッテルや「罰則」的なニュアンスも伴ってしまうので、もっとよいネーミングがないかと考えてはいるのですが、なかなか思いつきません。-「エクストラタイム」「自主勉」「特訓☆虎の穴(古・おまけに塾が違う)」-全然ピンときませんね。いましばらくは「補習」でいこうと思います。

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