23年 大学入試合格記~総括として~

ちょうど1年前の今頃、新高3生(今春大学受験をした生徒)の保護者の方からメールをいただいた。ごきょうだいを長くお預けいただいた保護者の方で、ご相談を多くお受けしたり、また指導に対して率直なご意見をいただいたりもしてきた。そんなお母さんからのメールだった。

お言葉を選ばれて、私に気を遣われた文面だったが、有り体に言えば「今年(昨年度)の大学受験の結果がさみしいが、それについてできる範囲で説明が欲しい」とのことだった。

すでにHPは更新してしまったので見られないが、昨年度の大学合格は3名、3校だった。一昨年が東大、東北大、早稲田と最上位の学校が並び、また私は進学先だけでなく複数合格の結果も載せるので、上記大の併願ともなればこれまた上位大がずらっと並び、雑駁な言い方をすれば、とても「景気がいい結果」ではあった。それと比べると、確かに昨年度の結果はさみしかった。保護者の方が心配されて「何かあったのか?」と思われるのも、ある意味致し方ない。内訳を簡単に記せば、昨年度は最終在籍者が4名、うち2名は公募推薦での合格が決まっており、一般受験は2名だった。そのうち1名は浪人覚悟での受験で結果浪人となり、もう1名は上位大を狙った結果として押さえのみ合格ということで、3名3校の合格だったという次第だ。

進学塾Uineは小さい塾なので年によって在籍者の志望も、また在籍者数も大きく異なる。それは高校入試も大学入試も変わらない。うちは本当に年ごとに在籍者数が違うので、合格の結果は一貫していないと見えるだろう。もちろん高校受験も大学受験も、生徒達がそれぞれの志望に向けて、真摯に、ひたむきに努力する姿勢は毎年変わらない。合格の結果や数がさみしく写るとすれば、それはいろいろな意味での私の不徳の現れだ。

今年の大学受験は在籍者10名、定員いっぱいでスタートした。「合格おめでとう!」のページを見ていただければ分かるが、昨年とは対照的な結果となった。内訳としては、指定校推薦2名、公募推薦1名、国立大の総合型選抜1名の4名が推薦扱いで、残りの6名が一般受験組だった。結果は生徒達一人ひとりのものであるが、それぞれの生徒の努力に対しては指導者として胸を張りたい。いや、高校入試の合格記でも書いたが、今年の大学受験、高3生も私には過分な生徒達ばかりで、取り組みを思い出すと胸が熱くなる。

本格的に大学受験指導を初めて4年目の入試だったが、過去の反省をふまえて「しっかりてこ入れ・はたらきかけをする」を念頭に指導をしてきた。これまでも別にほったらかしにしていたわけではないのだが、ちょっと生徒を信頼しすぎた点、任せすぎた点があったという反省があった。具体的には、自習室での自習について、「定休日」を多めに作ったりするなど、自習/演習時間が短い生徒に対してあまり強く働きかけなかった。もう高3生なのだから、自覚と自律に任せるという「きれいごと」が強すぎたのかもしれない。英単語テストについても同様で、進みが悪い生徒、なんやかや理由をつけてやらない生徒に対して強制力をはたらかせることもあまりなかった。

自習/演習が少ない生徒、英単語テストの進みが悪い生徒の結果はいわずもがなである。泥臭く努力して力をつけるのが進学塾Uineのやり方であり、「らしさ」だ。飛び抜けた能力がない我々が結果を出すのに、労を惜しんではならない。そういう基本を徹底することを改めて胸に期した。

中学から(生徒によっては小学校から)指導している生徒が多い学年だったので、「さあ、中学の時みたいにガツガツいくよ!」的にスタートしたのだが、あまり私が言わずともしっかりやる学年だった。自習室での学習時間も、英単語テストの取り組みも、皆これまでない頑張りを見せてくれた。なんだか、こちらの気合いが入りすぎて肩透かしを食らった気もしたが、まあ私の独り相撲というものだろう。私としては、授業のクオリティとスケジュールを精査しながら色々と「早め」を意識した指導を心がけた。

今年の生徒達は安定していたが、その安定感のもととなったのは、まずは徹底した自習/演習だろう。ここでも書いたが、今年の高3生は夏休みは午前8時~午後10時で自習/演習をやりとげ、そうした徹底は受験期まで続いた。徹底した学習時間は自信や気持ちの安定にもつながる。成績や受験の結果に不安を募らせる中、それらを乗り越え、明日への活力を生むのは「自分はちゃんとやっている」という事実の力が大きい。高校部の本格始動については自習室を整えることが必須条件として、それができてからのスタートとなったわけだったが、今年ほど自習室を用意してよかったと思う年もなかった。

教科指導では、当然のことながら英語を最重要視し、そこに力を入れたことが功を奏したと思う。特に読解の面では中学時代からの精読を更に徹底し、それをうまく大学受験での物量読解に結びつけられた感がある。共通テストもしっかり対策を行い、塾内平均点はリーディング/リスニング合わせて161.6点と、8割を超えた。もちろん、一人ひとりの単語テストに対する真摯な取り組み(うちはシステム英単語を使用)がその主要因であったのは間違いない。ほぼ全員が夏休み終了までに4回転を終了させ、最後まで単語の習得にはこだわった取り組みをしてきた。

一人ひとりについて簡単に記したい。

Rさん。杏林大進学。中1の終わりから5年間も通ってくれた。中学時代はなかなか成績が伸びず苦労したが、高校受験の最後の最後でグイッと力をつけて希望の都立高校に入学した。高校でもコツコツ頑張って、私の「高校で上位15%以内の成績を取ろう」をしっかり意識し、常に学年上位10%以内につけた。やりたいことがしっかり決まっていた芯の強さを、大学での勉強にも存分に生かしてくれるものと思っている。

Kさん。上智大進学。小学校から在籍してくれた、一番の古株(女子にはちょっとふさわしくない言い方かな)。高校ではやりたかった部活と勉強の両立をしっかり図ってきたが、受験期に科目選択で大いに悩み、3年の夏に大決断をした。大きな賭けでもあったがそれが吉と出て、受験結果は大成功。この学年で英語が一番伸びたのはKさんだったかもしれない。

S君。同志社大進学。中1からの在籍。中学時代から抜群の理系センスがあった。一方国語のセンスはもう一つで、おもしろいことを言おうとしてやや滑るタイプ(失礼)。最難関を目指し頑張っていたが、そのおかげか学校の成績も良好で、受験期に指定校推薦との二者択一に悩み、結果推薦を選んだ。一般受験での勝負を見たかった気もするが、受験と大学生活は彼自身のものだ。その決断を支持したい。

R君。東京理科大進学。真面目を絵に描いたような取り組みで、中学、高校と地道に力をつけた。高校では3年間を通して学年最上位の成績を修め、指定校推薦で合格。やや朴訥としたタイプで言葉や説明が足らず、私に小言を言われることも多かったが、中学時代からの成長を思うと感無量と言うしかない。

S君。日本大進学。中学時代に在籍してくれ、高3の開始時に戻ってきてくれた。高2で留学していたため理数の勉強にかなり遅れがあったのだが、そこは努力で挽回。早いうちから大学で勉強したいことが決まっており、日大の公募推薦での進学を目指した。やりたいことが明確なので志願理由書も各種課題も焦点がビシッと合っていて、かなりの自信をもって臨むことができた。推薦を狙うという戦略もよかったと思う。

K君。島根大進学。高校からの入塾で、はじめは英語、数学ともにちょっと足りない部分が多かった。特に英語は学校のやり方(習うより慣れろ式)とうちの精読スタイルがはじめはかみ合わず、本人的には違和感も大きかったようだ。経験では、この2つは相反するものでもなんでもなく、うまくかみ合うとかなりの力になる。果たしてK君も次第に要領を体得し、英語はかなりの力をつけてくれた。高2の中頃から第一志望を島根大にし、総合型選抜で合格。添削→修正→添削…という地道な作業と受験の勉強を並行して立派にやり遂げた。

R君。千葉大進学。上記K君の紹介で高2時に入塾してくれた。K君以上に英語の違和感がはじめは強く、「ちょっと塾のやり方と自分のやり方がうまく合わないんで、自分のやり方でやっていいですか」的な相談もあった。もちろんそういう二者択一にはせず、両者を融合して力をつけようとアドバイス、次第に軌道に乗って力をつけた。国立第一志望でダメならもう1年のつもりで最後まで頑張り、見事に合格。最後の最後まで緩めることなく自習室に詰めたことが合格の大きな要因だったと思う。

Y君。東京理科大進学。高3の夏前まで部活があり、なかなか自習時間が増やせなかったが、この学年で一番と言っていい「頭のいいタイプ」。勉強センスは抜群で、部活終了後は自習時間を増やしグイグイ力をつけた。科目間のできに穴はないものの、数学は演習量が追いつかず最後まで細かいミスに苦労したが、非常勤M先生のうまい導きもあって受験にはしっかり間に合った。

O君。國學院大進学。Y君と同じく部活があって、必要な世界史の演習が夏休みまで思うように進まなかった。それでも部活引退後は怒濤の追い込みで、世界史も相当仕上がった。直前の過去問演習ではなかなか得点が上がらず不安も大きかったようだが、私に細かく相談するなどして勉強の方向を微修正し、本番に臨むことができた。

S君。早稲田大進学。中2から通塾してくれた。自他共に認める「自習室の机回りが一番乱雑だった男」(笑)。一方勉強は緻密で繊細な学習をするタイプ。高2のはじめに「先生、大学は早稲田とか行きたいので、今から何をやればいいですか」と相談してきた。逆算して世界史の演習だとか英単語の目標などを設定して進めてきたが、彼はできないこと、不安があることを決して放置しない(これはなかなかできない!)タイプで、それが確実な実力向上につながってきたと思っている。受験は強気の併願作戦だったが、いわゆる「全勝」。努力が実を結んだ立派な結果だったと思う。

一人ひとりについて書きたいことはまだたくさんある。それぞれとの付き合いの年月だけ、思い出も、苦労も、多く積み重なっている。今年もまた忘れ得ぬ生徒達が卒塾していった。感傷に浸る間もなく、新しい1年はもう始まっている。

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