やり残した思い

22日の都立入試をもって20年度の高校入試スケジュールはすべて終了した。3月2日の発表まで、生徒も保護者の方も落ち着かない日々を過ごしているだろう。もちろん私も、27回目の受験だからといって泰然自若などとなるわけもなく、毎日、毎時間、今この瞬間、うわっと叫んで走り出したくなるような未熟なざまで過ごしている。

今年の都立入試はコロナ禍による学校休校の影響で出題範囲が短くなるという、例年にないあり方の影響がどのように出るのか注目されたが、その影響は決して小さくなかったようで(私はすぐには問題分析をやらないので詳細は不明。今年はまだちゃんと問題さえ見ていない)、色々なところから「傾向が変わった」「難しかった」の声が聞こえてくる。そして、進学塾Uineの生徒たちのできも決してよいものとは言えなかった。何人もの生徒が、過去問演習で取ったことのないような点数を取ってしまった。力を出し切ったと言える生徒は、残念ながらごく少数だった。

―確かに、言われるような傾向変化や難度のアップ(平均点の低下)があったのかもしれない。コロナの影響で業者の会場模試がすべて塾内受験となり、見知らぬ受験生に囲まれてのテスト経験が積めず、舞い上がってしまったのかもしれない。今年の中3は皆素直で真面目だが、その裏返しとしての図太さや小ずるさのような幅に乏しく、テストでの脆さにつながってしまったのかもしれない。なにより、私の指導が年を重ねてマンネリ化し、生徒たちの実際と微妙にずれが生じてその力を伸ばしきれなかったのかもしれない―

試験が終わった後にとめどなく湧いてくる、思うようにいかなかったことの要因探し、そして「たられば」。不毛なことだとはいえ、どうしても頭を離れないことである。

進学塾Uineの中3生の指導は都立入試前日まで。入試翌日以降の授業はないのだが、毎年都立入試が終わるとすぐに学校の定期テストがあるので、生徒たちには一応「試験勉強会はやってるからやりたければ来ていいよ(笑)」と伝える。もちろん、例年だと誰も来ない。

今年は都立入試翌々日の天皇誕生日(祝日)の試験勉強会に、4人もやってきた。うち2人は午前9時30分から午後6時までの予定を超えて、私が塾を閉める午後8時頃(私が促すまで)まで勉強していた。翌日は試験当日だったが、学校が終わったら前日最後まで残った生徒のうちの1人がすぐやってきて、この日も私が塾を閉めるまで試験勉強をしていった。

こうした生徒たちの姿を、ツイッターでは「本当に塾が好きだな」的に書いたりしたのだが、4人がやってきた時にすぐ分かった。彼らは都立入試でやり残したのだ。もっと勉強できたはず、もっと本番でやれたはず。そんな心の中でうごめく複雑なやり残し感を、明日からの定期テストの勉強で少しでも昇華させないと、いてもたってもいられないのだ。その胸中を思うと、胸が熱くなった。

私だけでなく生徒たちの胸にもくすぶるやり残し感。それが合格の2文字で吹き飛ぶのか、それとも不合格によって強く心に刻印されるものとなるのか。できることなら、悶々とした気持ち、眠れない夜を過ごす生徒たちの思いは私がすべて引き受けたい。

今年の中3生は小学部からの在籍者がほとんど(逆に、中学以降の入塾がきわめて少ない学年だった)で、非常に一体感のあるクラスだった。学力は様々だが、みな素直で努力家、ちょっと精神的には幼さを感じるものの、進学塾Uineを信じてここまできてくれた。その生徒たちへの思いは、当たり前だが言葉では尽くせない。すべての中3生と保護者の方の感謝をしながら発表を待ちたいと思う。

いつもなら発表当日に入試を総括するエントリーを書くのだが、今年はまさに今不安な日々を過ごしているであろう生徒たちの気持ちに寄り添うつもりで書いてみた。そしてまた、今日2月28日をもって進学塾Uineを開校して丸10年となる。その節目の日をこうした思いを抱きながら終えるのは、ある意味幸せなことなのかもしれない。

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